核融合エネルギーのブレイクスルーを達成か--米政府が近く発表

JACKSON RYAN (CNET News) 翻訳校正: 緒方亮 高橋朋子 佐藤卓 (ガリレオ)2022年12月13日 10時50分

 米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の科学者らが、核融合反応において驚くべき新たな高みへ到達したようだ。最近の実験で、投入したエネルギーを上回るエネルギーを生成したと、Financial Timesが報じている。

核融合のイメージ
提供:John Jett, Jake Long/LLNL

 同紙はこの結果について、「最近の実験の予備的な結果に詳しい」科学者らの話として報じており、現在分析が進行中だという。米国東部時間12月13日午前10時ごろからLLNLで重大発表があり、米エネルギー省がその様子をライブ配信する予定だ。

 LLNLの国立点火施設(NIF)は、水素の小さなカプセルに200本近いレーザーを直接照射する「慣性閉じ込め核融合」実験を手がける。豪グリフィス大学の物理学者Nathan Garland氏によると、レーザーはカプセルの周囲にプラズマを作り出し、やがて爆縮を引き起こす。このような条件によって、核融合反応を起こさせる。

 核融合は太陽のエネルギー源であり、2つの原子核をぶつけ合うことで生じる反応だ。引き起こすには極めて高い圧力と熱が必要だが、実験室環境でこの条件を再現することは「この上なく難しい」とGarland氏は述べている。

 2つの原子を融合させることで放出されるエネルギーは膨大で、しかも重要なことに、炭素は放出されない。また、原子力発電所で用いられる核分裂(原子核が2つ以上に分かれる)と異なり、核融合は放射性廃棄物を出さず、メルトダウンの危険もない。つまり、核融合発電を実現できればエネルギー革命となり、大気中に温室効果ガスを出すことなくクリーンな電力を生み出せるようになる。

 Financial Timesの報道が正しければ、LLNLの科学者らは、核融合反応において1を超える「エネルギー増倍率」(Q値)を達成した可能性がある。核融合実験においてQ>1を達成できれば、科学者らが長い間夢見てきた、エネルギー分野における正真正銘のブレイクスルーが近づいたことになる。

 ただし、まだ分析が完了していない実験結果については、大げさに騒がず、慎重に構えるのが賢明だろう。以前にも同様のことがあったからだ。2013年にも、NIFがこの偉業を達成したという報道が飛び交ったものの、事実ではなかった。

 だが近年、NIFはこの目標の達成に向けて大きく前進している。2021年8月には、ほんの一瞬ではあるが、記録的なエネルギーを発生させたと報告している。

 今回の結果は、われわれが突如として無限のエネルギー供給源を手に入れたことを意味するものではない。NIFで発生した反応は、数分の1秒かそれ以下であった可能性が高い。それでも、核融合エネルギーが世界にエネルギーを供給する現実的で本格的な技術となるための第一歩といえる。このような核融合実験でQ>1を達成できるという概念を実証するものだからだ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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