ドコモ業績に「通信品質低下」の影?--モバイル売上高、3社で唯一減少のワケ

 2月上旬、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの決算が発表された。

 スマホ業界は、2020年頃の菅内閣の圧力による「官製値下げ」で、相次いでオンライン専用プランなどを投入。それ以降、モバイル通信料金収入が大きく落ち込むという憂き目を見てきた。

 しかし、直近の決算会見でソフトバンクはモバイル売上高について「ついに増収に転じた。通信料値下げに影響を受けた減収トレンドが3年は続くと覚悟していたが、2年半で抜け出せた」(宮川潤一社長)とコメント。

 KDDIも通信ARPU収入は伸びており、第4四半期には増収になる見込みだと、髙橋誠社長は語った。

  1. 要因は「irumo」とドコモ説明
  2. 通信品質低下の影響はないのか
  3. 5Gを本格化させるKDDI、ソフトバンクに追いつけるか

通信料収入でドコモだけ苦戦、要因は「irumo」とドコモ説明

 一方で、いまだに苦戦を強いられているのがNTTドコモだ。

 2023年度第3四半期において、モバイル通信サービス収入は359億円の減少となっている。

 KDDIやソフトバンクがすでに減収から増収に転じつつあるのに対して、NTTドコモのモバイル通信料収入はこれから厳しさを増す可能性が極めて高い。

 なぜなら、ソフトバンクがワイモバイル、KDDIがUQモバイルといったように、何年も前からサブブランドを提供してきていたのに対して、NTTドコモがメインとは異なるブランドを始めたのは2021年だ。具体的には、オンライン専用料金プランとして「ahamo」を提供し、さらに2023年なって、ようやくサブブランド的な位置づけの料金プラン「irumo」を投入したばかりだ。

 先日の決算会見で、通信料収入が下がっている点を記者に聞かれたNTT 代表取締役社長の島田明氏は「ひとつの要因として、ありがたい話だがirumoが結構売れている。セカンドブランド相当の料金プランを出したことの影響が多少出ている。(他社より)少し遅れて出しているので、その影響が一定程度あって、そのあと反転してくるだろう見ている」と語った。

 これまで、データ使い放題か割高な従量制プランしかなかったNTTドコモだが、ahamoに加えて、小容量のデータプランを選べるirumoを投入したことで、NTTドコモのユーザー間でirumoへの乗り換えが多く発生しているのだろう。

 前回の決算会見でも、新料金プランを発表したことでドコモショップへの来店数が一気に増えたとNTTドコモ 代表取締役社長兼CEOの井伊基之氏が語っていた。

 本来であれば、irumoの魅力に他社ユーザーが気がつき、auやソフトバンク、UQモバイルやワイモバイルからirumoに乗り換えるユーザーが増えれば、NTTドコモとしてもirumoは大成功だったと言えるはずだ。

 しかし、同じ決算会見でNTTの島田社長は「MNP(ナンバーポータビリティ制度)の成績が良かったというと必ずしもそうではないし、ARPUも完全に反転しているわけではない。春商戦にどう対応していくかまさに検討しているところだ」と語っている。

 つまり、MNPの成績が良くなかったということは、MNPによって、他社からNTTドコモに移行するユーザーが多いわけではなく、むしろ、NTTドコモから他社にユーザーが流出している状態が続いている、というわけだ。

通信品質低下の影響はないのか

 ここで筆者が気になったのが、昨今の通信ネットワーク品質低下と顧客流出の関係性だ。

 SNSなどを見ていると、2023年春以降「ドコモのネットワークがつながりにくい」と不満を述べている人が散見された。知り合いの中小企業経営者は「NTTドコモがつながらないから、全社員の回線を楽天モバイルに切り替えた」とも語っていた。

 NTTドコモの通信品質に嫌気がさして解約した人が多く、契約者数に影響はあったのか。島田社長に直接聞いたところ「アンケートを採っているわけではないので、わからないが、あまりいないんじゃないかと思っている。自分で言うのは変だが、NTTドコモはここのところ、一生懸命頑張っている。実際、コロナ禍が明けてからのトラフィックは(その前より)倍ぐらいに増えていた。その対応が後手に回ってしまっていたことは反省をしている」と述べた。

 確かに、決算資料から解約率などの数値を見ても、特段悪化している様子は見られない。ただ、島田社長の発言をSNSに投稿したところ「嫌気がさしてとっくに辞めた」という発言もあれば「改善するという会見を信じて、いまだに我慢して使い続けている」という声もあった。

 NTTドコモは、ユーザーの期待を裏切ることなく、早期に品質改善をやり遂げる必要があるだろう。

5Gを本格化させるKDDI、ソフトバンクに追いつけるか

 KDDIはこれまで衛星通信の地上局との干渉によって、制限されていた5G周波数帯の活用を2024年から本格化できると発表。4月以降に5G専用周波数帯の通信エリアが面的に拡大すると発表。

 ソフトバンクの宮川社長も「スカパーに相当、協力していただき、衛星干渉がなくなり、我々も出力を上げられるのは(KDDIと)全く同じ。我々は首都圏であっても3セクターの展開をしていて、もっと聞きやすい状態になるはずだ」という。

 2024年、KDDIとソフトバンクが5Gをようやく本格化していくなか、NTTドコモも追いつき、他社よりも快適なネットワークを提供できるのか。手腕が問われようとしている。

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